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今、国立宜蘭高中(高校)創立70周年記念の屋外作品を制作中である。古里・宜蘭の雲や空といった自然をテーマにしたものだ。高さ4メートル、幅6メートルに及ぶ大きな作品で、日頃の古里への思いが結実している。4月に完成予定だ。

「子供の頃、宜蘭は人も車も少なく生活も単純だった。今は交通の便が良くなって観光地となり、何もかも変わってしまって、かつての穏やかで静かな生活は失われている」。そんな郷愁が、この作品に投影されている。
1959年、宜蘭県生まれ。祖父はかつて、台湾の南北縦貫道路工事に携わっていたことがある技術者だった。自宅にも大きな工事機具があって、その立体の存在感に魅せられていたという。そして「自然な流れ」で国立台湾芸術専科学校(現在・台湾芸術大学)彫塑科に進む。

卒業後、6年間、母校で教授のアシスタントを務め、デザイン会社に勤務しながら、彫塑作品制作を続けていた。20年ほど前に、現在アトリエを構える宜蘭県頭城鎮に移り住んでから、創作活動を本格化させた。
写実的な作品からスタートし、抽象、ミニマムアート、マスク、空洞、ナイフというように、作風はかなり移り変わっているが、いずれの作品も、人間の持つ悩みや悲しみといった根源的なものを表している。素材としては銅、ブロンズなど様々な金属を使う。

制作は構想ができた段階でスケッチを描き、スケジュールを決める。その用紙には作品のコンセプトも。なかには詩のようなものもあって、テーマ性を大切にしている様子が分かる。
1997年に「慾望之櫃」という作品を発表した。棚のようにみえる構造物が、頭のうえで一体化している。本来、欲望を閉じ込めておくはずの棚なのだが、開放されていて野放しのようにみえる。瞳はなく口は開いたままで、空虚な顔のよう。人の欲望の有り様を風刺しているかのようだ。
この作品を含むマスクシリーズの個展を開いたが、入場者はおらず1点も売れなかった。「個展で1人も買う人がいないというのは、なかなかない」と苦笑する。現代人の苦悩に正面から向き合った作品は好まれなかったようだ。

一方で、抽象表現主義を批判的に継承しつつ、抽象美術の純粋性を徹底的に突き詰めたミニマルアートの先駆的作品を残した、彫刻家のコンスタンティン・ブランクーシや、その助手を務めたアーティストのイサム・ノグチを尊敬している。
アトリエは碓渓温泉からほど近い場所にある。その当時は緑豊かで閑静な田園地帯だったが、今では台北市と宜蘭県を結ぶ高速道路が近くを通り、都会から人やモノを運んでくる、忙しない観光地になったと感じている。
様々な作風の変遷を経て、今はかつての古里への憧憬を込めた作品制作に向かっているのだ。
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