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| 本誌連載第44回 |
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林志剛
●リン・シゴウ 弁護士・弁理士。
台湾における知的財産関連業務に携わる法律事務所として最大規模の台湾国際専利法律事務所(TIPLO)所長。
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盗まれた金庫内の宝石
1996年12月7日、台湾・桃園にあるS銀行の貸し金庫が、4人ほどの強盗グループによって破られ、保管された金品が洗いざらい盗まれた。銀行の契約警備会社X社は、警報が大きく鳴ったのに、翌々日の9日になって初めて異常に気付き、盗難事件として警察に届けた。これに盗難被害者らは仰天して、銀行側の重大過失を指摘して、盗難による損害賠償を全額請求した。
A氏夫婦は盗難に遭った金庫の中に4区画ほど借りて、所持する宝石金品から娘の嫁入り家財まで相当数収めた。A氏らによると、持ち去られた同金庫所蔵の金品宝石などの市場価値は、合計2400万元に及ぶという。
一方、金庫を提供するS銀行側は、顧客に金庫を提供するサービスは、あくまでスペースの賃貸し契約に過ぎず、銀行側は金庫の使用状態を健全に維持さえすれば充分であり、顧客が任意に金庫に納めた物品に対して盗難による被害の賠償責任は、原則5万元にとどまるとした。さらに、それより高額の損害は立証した後、50万元までの賠償を行う。このような銀行側のあまりに無責任な言い草にA氏らは憤然として、S銀行に損害賠償請求訴訟を提起した。
一審判決は2000年3月ごろに下りて、S銀行は貸し金庫契約の履行に関して、その契約履行補佐人に当たるX警備会社の重大過失によって、50万元の賠償上限の保障を受けられずに、盗まれたAの預けた金品の価値をAの主張と唯一見張り役を務めた共犯者Yの供述によって認定して、結果的にほぼAが主張する通りの2400万元の損害賠償金額を是認した。
S銀行は損害金の認定が甘すぎる点が不服として控訴したが、2002年12月ごろに下された高等裁判所の判決は、S銀行側に重大過失があった点は維持したが、盗難による金品の損害金額の認定を一段と厳格にして、Aの損害賠償請求金額を880万元ほどに切り下げた。この判決に対して、AとS銀行は共に最高裁判所に上告した。
原石に戻ったブランド宝石
2003年6月に下された最高裁判所の判決は、正に喧嘩両成敗の結果になった。Aに認められた損害賠償金額は、950万元に引き上げられたが、2400万元の損害を請求したAにとっては、弁護士代などをぎりぎり賄う程度の弁償らしい。それでもS銀行にとっても、予想以上の負担になった。
判決のポイントは次である。
(1)貸し金庫サービス契約の当事者間は、銀行側が顧客にスペースを賃貸しで貸し出す契約となるに止まり、寄託契約にはならない。
(2)それでも、金品を預かる銀行側には、金庫の安全保護に関しては善良管理人の注意義務を負う。本件の盗難状況を見れば、警備会社と銀行側に注意義務の履行に重大な怠惰が遭ったのは明らかだった。
(3)そのため、銀行は顧客の盗難による損害を回復する賠償責任がある。
(4)損害金額の立証責任と証明方法:原則上、当事者は自分に有利な事項について事実であることを立証すべきである。但し社会通念上推定できる状況に関しては困難すぎる立証を強要することはない。地裁の一審判決では、Aが自ら提示した預けた金品のリストとそれぞれの市場価格の合計に基づいて、共犯者の供述を参考にして実損金額を定めたが、当事者一方の評価は客観性が不十分のと、見張りを務めた共犯者は盗難の内容物に関して供述する適格がないとしてその認定が不法であるとした。
銀行側は金庫の開閉と金品の出し入れに一切関与しないから、所蔵品の証明は顧客側が具体的に証拠を提示する義務がある。950万元ほどの金品の価値を認定した根拠は、金庫に置き去りにされた、金品の販売元が発行した各収納品の内容と純度等を示す保証書等の書類証拠である。貴金属や宝石などの金品の市場価格は盗難発生当時の相場に照らして重量などの単位に基づいて算定すべきであり、金品の購入価格や出品元によるプレミアム相場などとは関係ない。カルティエのジュエルやティファニーのダイヤでも、貴金属や宝石の現物重量での一般相場次第の鑑定価格となるので、Aの損害額が大幅に下がったわけである。金銀宝石は手元にあるうちに大事に使ったほうが賢明だろう。
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