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文・写真 片倉佳史
台東市の沖合いに位置する緑島。ここには海底温泉が湧き、夏場を中心に多くの行楽客が訪れている。現在は観光地として知られるこの島だが、かつては台湾最大の政治犯収容所があった。今回はこの収容所をはじめとする現在の姿を紹介してみたい。

太平洋の沖合に浮かぶ小さな島
緑島は台東の東南約30キロほどの場所にある。一周わずか20キロあまりの小さな島で、全域が台東県緑島郷の管轄となっている。日本統治時代の名は「火焼島(かしょうとう)」。戦後は長らく、政治犯収容所が置かれていた島である。
この島は面積こそ小さいものの、山あり谷ありで景観は意外なほどの迫力となっている。特に東海岸は嶮しい地形が連続している。島を一周する環島公路が整備されているので、レンタバイクなどで回ってみよう。坂道が多いので少々きつい道のりだが、自転車の利用もおすすめだ。この時期は午前中を中心に天候が安定しているので、早朝に宿を出て、じっくり歩いてみるという手もある。
島一番の観光スポットは後述する海底温泉だが、南寮港からは観光用グラスボートなども出ている。美しい海中景観を満喫できるほか、ダイビングなども可能だ。
緑島の歩き方
緑島までは台東豊年機場(空港)からわずか15分。乗客の数によって増便されるが、全体的に混雑していることが多いので、席の確保は早めにしたほうがいい。
また、台東富岡港から船の便もあり、こちらは所要50分となっている。ただし、こちらはスケジュールの変更が多く、欠航も少なくないのでおすすめはできない。富岡港までは鼎東客運バスの成功、静浦行きを利用する。富岡のバス停から港までは徒歩10分ほど。
空港を出たら、まずは緑島遊客中心で地図やパンフレットをもらおう。島の中心となっているのは南寮村。ここには漁港があり、フェリーもここに発着している。民宿やレストラン、コンビニエンスストアなどが集まっており、ささやかな賑わいを見せている。レンタバイク・レンタサイクルの店もここにある。

世界でも珍しい海底温泉
この島で最も知られているのは海底からわき出す奇泉だ。ここは朝日温泉と呼ばれている。以前はただ浴池があるのみだったが、現在はスパ設備や更衣室が整っている。終日訪れることができるので、日中はもちろん、夜間の訪問もおすすめだ。海から浮かぶ日の出を前に温泉浴を楽しむ人もいるという。
温泉は海底から湧き出ており、満潮になると海に沈んでしまう。泉質は硫黄泉だが、水は澄んでいる。合計3つの浴池があり、手前が源泉になっている。50度から90度と潮の加減によって温度が変わるので、お好みの浴池をさがそう。
また、緑に映える高さ33・3メートルの燈台も訪ねておきたいスポットだ。ここは1937年、アメリカ客船プレジデント・フーバー号が近海で座礁したことをきっかけに造営されたもの。第二次世界大戦で砲撃を受け、48年に再建された。
絶景を楽しむなら、海參坪と呼ばれるスポットを訪ねたい。ここは島で随一の絶景スポットとされており。柱状に切り立った玄武岩地形が見物となっている。約400メートルの遊歩道が整備されている。展望台なども設けられ、じっくりと景色を楽しめる。群青色の海原も印象的だ。
人権公園として整備された政治犯収容所
この島にはかつて、中華民国国民党政府が設けた政治犯収容所があった。終戦によって日本統治時代が終わり、中華民国政府が台湾の統治者となったのは周知の事実だが、ここは蒋介石・蒋経国時代の時代の産物である。
1949年5月19日、国民党政権は戒厳令を発布し、1987年7月15日に解除されるまで、38年間という長期にわたる言論統制の時代が続いた。いわゆる「白色テロ」の時代である。この時期、反共思想を取り締まるという名目のもと、不当逮捕が横行した。エリート層を中心に多くの台湾人が政治犯として捕えられ、苦渋の日々を送った。
この島に監獄が設けられたのは1911年に遡る。当時、火焼島と呼ばれていたこの島に、浮浪人収容所が設けられた。これがもととなり、戦後、政治犯収容所が設けられた。
緑島には1951年から1000名を超える政治犯が送り込まれた。そして、思想改造という名の下、強制労働が行なわれた。中でも、新生訓導所の収容者数は最多で2000名に達したと言われている。
当時、国民党政府は台湾に戒厳令を敷き、徹底した言論統制を行なったが、その際、多くの台湾人エリートや日本軍関係者、資産家などが狙われ、身柄を拘束された。新生訓導所の政治犯は1965年から台東県の泰安に移されたが、ここは引き続き、重刑犯の収容所として機能した。
現在、民主化を経て、こういった収容施設は過去のものとなっている。しかし、歴史を忘れず、史実を後世に伝えるべく、「人権文化園区」が整備された。現在は公園となっており、約32ヘクタールの敷地を誇っている。ここには緑洲山荘、新生訓導処などの施設が含まれている。
海岸に面した人権記念公園の壁には受難者の名前が一人一人刻まれている。かつての新生訓導処は建物そのものが展示館となっており、当時の写真や資料が展示されている。また、緑洲山荘は高い塀に囲まれた刑務所で、八卦楼と呼ばれる建物が公開されている。いずれも展示室では人形などを用い、収容所の生活風景を忠実に再現している。パネル展示などもあるので、できれば多めに時間をとって、じっくりと参観してみたい。
自由な社会となった現在の台湾からは想像もできない歴史の一風景だが、これもまた、台湾史上の真実である。こういった歴史は為政者によって隠されてきたという事実もあり、外国人はもちろん、台湾の人々でも十分な理解があるとは言えない。緑島を訪れた際には、美しい自然だけでなく、収容者が味わった苦難の歴史と台湾社会の民主化の歩みも学んでみたいものである。

DATA
緑島人権文化園区のウェブサイト(日本語)
http://2011greenislandjp.wordpress.com/
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