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文・写真 片倉 佳史

 現在は中山堂と名付けられている建築物。ここはかつて、台湾において敷地面積が最も大きい建物として知られていた。島都台北の繁華街となっていた城内地区の中心部に位置している。



 この建物は終戦まで台北公会堂と呼ばれていた。全体がモスグリーンで統一されており、重厚な雰囲気をまとっている。竣工は1936(昭和11)年12月。鉄筋コンクリート造りの堅固な建物で、約8年の歳月をかけて造営された。そして、昭和天皇の即位を記念して造営が発起されたという記録も残っている。

 敷地面積は1240坪。建物は地上4階建てで、館内には3つのホールを有している。全体的にシンプルな装飾ではあるが、天井や窓枠などの細部にはアラビック模様や東洋的な雰囲気がさりげなく配され、趣深いものとなっている。

 建物の表面には薄緑色のスクラッチタイルが貼られている。やや地味な印象を与えるこの色あいは、専門家の間では国防色と呼ばれていた。スクラッチタイルは表面に意図的に縦のひっかき傷を付けたもので、整然としたデザインが好まれるようになっていた1930年代の建築界では、ささやかなデザイン要素として数多く採用されている。ちなみに、このタイルは台北郊外の北投の窯で焼かれた純台湾産のものが使用されていた。



 ここでは講演会や式典などがそれこそ毎日のように催されていたという。しかし、ここで行われた最大の行事と言えば、やはり1945年10月25日の台湾地区降伏式典であろう。これは台湾地区における「終戦」と国民党政権時代は位置づけられ、統治者の交代を意味する瞬間でもあった。

戦後、台北公会堂は中華民国建国の父とされる孫文にちなみ、その号を取って「中山堂」と名付けられた。名前は変わっても、そこに漂う重厚感は今も色褪せることはない。最近は政府によって史跡にも指定され、保存されていくことが決定している。館内にはカフェ・レストランもあり、その建築美に触れることも可能だ。


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